新しいWebサービスの案をLINEで知人へ送り、「便利そう」と返事をもらう。別の日には、電話で同じ相談を受けた人へ紙の画面案を見せると、「どこから申し込むのですか」と聞かれる。反応はあるのに、開発を頼むほど確かめられたのかは分かりません。

紹介文をメールで送るたびに説明が変わったり、仮の申込を手元の表へ写したまま返事を忘れたりすることもあります。アイデアを早く形にしたい一方で、作った後に「思っていた使われ方と違った」となる不安も残ります。

この記事では、新しいWebサービスの案を持つ経営者や事業担当者が、開発前に誰へ何を見せ、どの反応が得られたら次へ進むかを整理します。Webサービスとは、予約、紹介、申込、検索、やり取りなどをブラウザ上で利用できる仕組みを指します。

アイデアをどこまで形にすべきか迷うのは自然です

「アイデアはある。でも、いきなり開発を頼んで、誰にも使われなかったらどうしよう」

たとえば、次のような場面です。

  • LINEで案を送ると好意的な返事は来るが、実際に申し込む人がいるかは分からない
  • 電話で受けている相談をWeb上でつなぎたいが、利用者がどの順番で進みたいか分からない
  • 紙に描いた画面を見せると質問が出るが、説明なしで使えるかは確かめていない
  • メールで試用希望を集めたものの、誰がどの困りごとを持っているか整理できていない
  • 予約や決済まで必要だと思うが、最初から全部を作るべきか判断できない
  • 似たサービスは見つかるが、自分の案との違いを一言で説明できない

この迷いは、アイデアが弱いから起きるわけではありません。

「便利そう」という感想と、実際に時間を使って試す、連絡先を残す、申込を続けるという行動は別です。

だからこそ、最初に作るものは完成版ではなく、一番大きな迷いを確かめられる形にします。

先に結論

新しいWebサービスを思いついたら、開発前に次の順番で確かめます。

  1. 最初に使ってほしい人を一つに絞る
  2. その人が済ませたい用事を一つに絞る
  3. 今の代わりの方法を確認する
  4. 一番分からないことに合う試し方を選ぶ
  5. 次へ進む反応と、止める反応を先に決める

説明が伝わるか分からないなら、一枚の案内と試用申込で確かめます。

画面の順番が分からないなら、クリックできる仮画面を触ってもらいます。

通知や受付まで動くか分からないなら、一つの用事だけが最後まで通る小さな試作を作ります。

完成版に近づけることより、次の判断に必要な反応を得ることが先です。

「この機能を作れますか」ではなく、「この利用者が、この用事を本当に進めたいか確かめたい」と相談できれば、最初の範囲を小さく保ちやすくなります。

30秒診断:いま何を試す段階?

4つの質問に答えると、関心、画面の流れ、動く仕組みのどこから確かめるかを仮決めできます。

結果は最終決定ではありません。

比較や開発相談で、最初の一歩を伝えるための目安です。

30秒診断

開発前に、何から確かめる?

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1. 最初に使ってほしい人と、その人が済ませたいことは決まっていますか?
2. 開発前に、一番確かめたいことは何ですか?
3. 試す間だけ、裏側の作業を人が代わりに進められますか?
4. いま手元にある反応は、どれに近いですか?

まずは4つの質問に答えてください

回答から、いま作るべき試し方を仮決めします。結果は開発の最終決定ではなく、比較や相談の入口です。

迷う場合は、いま一番分からないことに近い選択肢を選んでください。

作る前に、3つの事実を集める

最初に集めるのは、欲しい機能の一覧ではありません。

利用者の現在を知るための、次の3つの事実です。

1. いま何を使って済ませているか

電話、LINE、メール、検索、紙、既存サービスなど、現在の方法を聞きます。

「困っていますか」だけではなく、「前回はどの順番で済ませましたか」と聞くと、実際の行動が見えます。

2. どこで止まり、何を諦めているか

時間がかかる場所、確認し直す場所、途中でやめる理由を見ます。

サービス案の説明より先に、今の不便が繰り返し起きているかを確認します。

3. 次に取ってくれる行動は何か

「よさそう」という感想だけで終わらせません。

詳しい案内を希望する、試用日を決める、仮の申込をするなど、次の行動を一つ決めます。

米国中小企業庁は、市場調査で需要、対象となる市場、既存の選択肢、利用者へ直接聞く調査を組み合わせる考え方を示しています(参考)。

つまり、似たサービスを調べることと、実際の利用者の行動を見ることは、どちらも必要です。

4つの試し方を比べる

どれが優れているかを決める表ではありません。

いま一番分からないことに合う試し方を選びます。

試し方向いているケース主なメリットデメリット・確認点次へ進む判断材料
一枚の案内と試用申込誰が関心を持つか、説明が伝わるかを先に見たい

画面を作り込まず、説明と次の行動の関係を早く確かめられる

申込があっても、実際に使い続けるとは限らない。誰のどの反応かを残す

想定した利用者が、詳しい案内や試用を具体的に希望した

紙の画面案使う場面や必要な情報を、会話しながら整理したい

その場で順番や言葉を変えられ、説明のずれを見つけやすい

説明役が助けすぎると、利用者が一人で進めるときの迷いが分からない

利用者が自分の言葉で、使う場面と期待する結果を説明できた

クリックできる仮画面

検索、入力、確認、完了の順番で迷わないかを見たい

裏側の仕組みを作る前に、押す場所や分かりにくい言葉を確認できる

通知、支払い、外部サービスとのつながりが本当に動くかは確認できない

想定した利用者が、助けなしで一つの用事を最後まで進められた

一つの用事が動く小さな試作

受付、通知、検索、外部サービスとのつながりまで動かないと判断できない

実際の利用場面で、利用者と運営側の流れを続けて確かめられる

一度に複数の用事を入れると、何が良く、何が悪かったか分かりにくくなる

利用者が用事を終え、運営側も無理なく受付と連絡を続けられた

表の選び方に迷う場合は、「何を作るか」ではなく「次に何を知りたいか」へ戻ります。

公式情報から分かる試作の考え方

GOV.UKのサービス設計ガイドは、作り始める前に、利用者が何を達成したいか、現在どう済ませているか、何に困っているかを調べるよう案内しています(参考)。

同じガイドの調査段階では、最初から決まった解決策を置くのではなく、解くべき問題へ言い換えることが勧められています(参考)。

たとえば、「店舗検索サービスを作る」ではなく、「初めて来る人が、営業中の店舗を迷わず見つけるにはどうするか」と考えます。

この言い換えができると、Webサービス以外の方法で解ける可能性も見えます。

さらに、試作を行う段階では、利用者の流れをすべて作る必要はなく、判断に必要な難しい部分へ絞り、完成品として使う品質まで作り込まない考え方が示されています(参考)。

ここから、次の3点を判断の補助にできます。

  • 利用者と用事が分からない段階では、機能の見積もりより現在の行動を聞く
  • 大きな不安が一つなら、その不安を確かめる画面や流れだけを試す
  • 試作で分かった結果によっては、作らない、別の方法へ変える判断も含める

これは公的サービス向けのガイドを民間の新規サービスへ置き換えた、Ready Mockの判断の補助です。

期間や人数を一律の正解として当てはめるものではありません。

次へ進む反応と、止める反応を決める

試す前に、どの反応を見たら次へ進むかを書きます。

数字を無理に決める必要はありません。

まずは、行動が起きたか、迷いが減ったか、運営を続けられたかを具体的に見ます。

確かめたいこと次へ進む反応見直す反応次に確認すること
説明が伝わるか想定した人が、自分の用事として試用を希望した知人の感想だけで、具体的な次の行動が起きない利用者の絞り方と、解決する用事を見直す
画面で進めるか説明なしで、目的の操作を最後まで終えられた同じ言葉や入力場所で、複数の人が止まった順番、言葉、入力する情報を減らす
運営を続けられるか受付、確認、連絡を担当者が無理なく繰り返せた電話や手元の表への書き直しが試す前より増えた誰が確認し、どこへ記録するかを見直す

「好評だった」だけでは、何を続けるべきか分かりません。

見た人、取った行動、迷った場所を残すと、開発相談でも事実を共有できます。

相談前にできる5つの整理

完成した仕様書は必要ありません。

次の5つがあれば、最初に作る範囲を相談しやすくなります。

  1. 最初に使ってほしい人を、「忙しい人」のような広い言葉ではなく、具体的な場面と一緒に書く
  2. その人が今、電話、LINE、メール、検索、紙、既存サービスのどれで用事を済ませているか書く
  3. 一番確かめたいことを、関心、画面の流れ、実際の運営のどれか一つに絞る
  4. 試す間だけ人が代わりに進められる作業と、動く仕組みが必要な作業を分ける
  5. 次へ進む反応と、案を見直す反応を一文ずつ書く

たとえば、次のようにまとめます。

地域の教室を探す保護者が、空きのある体験日を見つけて申込できる案です。今は電話で空きを聞いています。まずは検索から仮の申込までの画面を触ってもらい、説明なしで進めるかを確かめたいです。教室への確認連絡は、試す間だけ私たちが手で行えます。

この一文なら、完成版の機能を並べずに、試したい用事と判断材料を伝えられます。

開発前の試し方チェック

いま答えられる項目だけ選んでください。

選べない項目は、開発相談で確認する議題になります。

そのまま使える相談メモ

分からない項目は空欄でも構いません。

「相談で決めたい」と書いて、そのまま初回相談へ持っていけます。

Webサービス案の相談メモをコピーできます

誰に何を見せ、どの反応を確かめるかを相談するためのメモです。決まっていない項目は「相談で決めたい」と書けます。

新しいWebサービス案について相談したい内容:

【サービス案を一文で】
例:地域の教室を探す保護者が、空きのある体験日を見つけて申込できる仕組み

【最初に使ってほしい人】
例:引っ越したばかりで、子どもの習い事を探している保護者

【その人が済ませたい一つの用事】
例:通える範囲の教室から、空きのある体験日を選ぶ

【今の代わりの方法】
例:検索で教室を探し、一つずつ電話して空きを聞く

【今の方法で困る場面】
例:営業時間内に電話できない。空きのある日を比べにくい。

【似たサービスと違う点】
例:教室の紹介ではなく、実際に空きのある体験日から探せるようにしたい

【開発前に一番確かめたいこと】
例:検索から仮の申込まで、説明なしで進めるか

【最初に見せるもの】
例:クリックできる検索・教室詳細・仮申込の画面

【試す間だけ人が進められる作業】
例:教室への空き確認と申込結果の連絡は、担当者が手で行う

【実際に動く必要がある部分】
例:希望日と連絡先を受け取り、担当者へ知らせる

【次へ進む反応】
例:想定した保護者が、説明なしで仮の申込を最後まで進められる

【案を見直す反応】
例:教室名から探したい人が多く、空き日から探す使い方が選ばれない

【相談で決めたいこと】
例:紙の画面案、クリックできる仮画面、動く試作のどこから始めるか

【共有できる資料】
例:LINEで説明した文面、紙の画面案、電話で受けた質問、似たサービスのメモ

次にやること

まず、最近その困りごとを経験した人を一人思い浮かべます。

その人が前回どう済ませたかを聞き、紙、案内ページ、仮画面、小さな試作のどれなら次の判断ができるかを選びます。

最初の相談では、次の一文で十分です。

新しいWebサービスの案があります。最初に使ってほしい人と用事はここまで考えました。完成版の見積もりより先に、何を見せ、どの反応を確認すればよいか相談したいです。

作ること自体を目標にしません。

利用者の行動から次の判断ができる、小さな確かめ方を作ることが最初の目的です。

参考情報

  • U.S. Small Business Administration, Market research and competitive analysis. 需要、対象市場、競合、利用者への直接調査を確認。2026年3月24日更新。2026年7月26日参照。
  • Government Digital Service, GOV.UK Service Manual, User research in discovery. 利用者、現在の行動、困りごと、必要としている結果を作る前に調べる考え方を確認。2016年11月18日公開。更新日の記載なし。2026年7月26日参照。
  • Government Digital Service, GOV.UK Service Manual, How the discovery phase works. 決まった解決策を解くべき問題へ言い換え、次の段階へ進むか判断する考え方を確認。2016年8月4日公開、2021年6月21日更新。2026年7月26日参照。
  • Government Digital Service, GOV.UK Service Manual, How the alpha phase works. 判断に必要な部分へ試作を絞り、完成品の品質まで作り込まない考え方を確認。2016年8月4日公開、2019年5月8日更新。2026年7月26日参照。